紙幣にみる、リベラルな合理主義
紙幣の話は、もういい。
まぁ、そう言わずに最後にもう一枚だけ紹介させてください。
画像はなかなか見つからなかった "Le Petit Prince" といっしょに入っていた、
オランダの10ギルダー紙幣です。
オランダへは一度しか行ったことがないのですが、TGVでリヨンからリールまで行って乗り換え、アントワープ(現在はアントウェルペンと言うんですね)を通過し
アムステルダム駅で下車してさっそく両替してもらったお札は、あまりにもポップで衝撃的でした。前回の「さがしもの、みつかる。」でいただいた「きなこさん」のコメントの通り、このお札にはオランダ人の文化と思想がふんだんに詰まっています。
オランダは王国です。そこには王様がいてロイヤルファミリーがいて。
専制君主制であれ、立憲君主制であれ、それらの国のお札のデザインは王様の肖像と相場が決まっています。しかしオランダのギルダーにあるのは幾何学模様とバーコード。個人崇拝に繋がる肖像を排除し、バーコードを印字することで会計業務を簡便化。複雑な幾何学模様は恐ろしく細かな線で構成され、ホログラムなどと合わせ偽造防止にとても有効です。
話は変わりますが、レンズの収差と解像度をテストするのに、これ以上最適な紙幣はありません。
前述のとおり、紙幣は偽造防止のため細い線で画を描きます。しかし、現在の高精細なプリンタであれば、例え細い線であっても容易に再現できるため、ホログラムや透かし、特殊なインク等のハイテク技術をもって相乗効果を高める方法がとられています。日本の紙幣でさえ、線の描写は肉眼で識別できる程度なのです。
この10ギルダー紙幣、紙幣専用の、それも、このギルダーだけを印刷するために特別に開発された専用の印刷機でなければ成し得ない、肉眼はおろか、4倍程度のルーペでは識別できない線が印刷されています。
お札自体の長方形と幾何学模様で歪曲を、肉眼で識別できない線は解像度を。
マクロで画面いっぱいに撮ったり、小さく撮ってレンズの限界を試してみたり。
お釣りでもらったであろう少額の、ちょっと使い古されたお札は思い出のためだけではありませんでした。
日本のお札に、天皇の肖像はありません。
でも、いい意味でオランダとはちょっと事情が違います。
でも、こちらもいい意味で理由があります。