これは小柄(こづか)と言って、刀の鞘に収める刀装具の一つです。袋状になっており、ペーパーナイフのような小刀を差し込んで使用します。実際に紙を切ったりするのですが、司馬遼太郎さんは小説の中で、土方歳三が爪切りのように使う描写をしています。
丁寧に蒔かれた魚子の一部がかなり磨り減っているのがおわかりでしょうか。この手の彫金のスタイルを「古美濃」と言い慣わしていますが、製作されたのはなんと室町時代。秋草の文様を細く高く彫り出し、金と銀で表現した小さな露象嵌の欠損もほとんどなく、どこか古風な繊細さを感じさせてくれます。