刀装具の撮像【4】《魚子》
画像をご覧になって、あのテーマ曲を想い出された方も多いのでは。
家格によって、あるいは時代によって少しずつデザインに違いはありますが、三つ葉葵は徳川宗家・御三家・松平家の定紋で、大名・旗本の数を合わせれば他と比較して圧倒的に多く、そのため刀装具にはよく見られる画題です。
《魚子》は彫金技法のひとつで、ササン朝ペルシアから中国を経て、奈良時代に日本に伝わったと言われています。画像の黒い部分がそうで、粒状に余白を埋めるのですが、先端が小円になった鏨を使って一つ一つ丁寧に打ち出します。これを魚子(ななこ)を蒔く、あるいは魚子を打つと言い、魚の卵が並んでいるように見えることからそう呼ばれます。
画像の紋は下の目貫の一部を切り抜き、拡大したものです。直径はおよそ13ミリで、その小さなキャンバスに三つ葉葵を彫金するのも大変ですが、蒔かれた魚子の粒の直径は0.2ミリ以下と極小で、肉眼でははっきり視ることさえできません。職人の腕の見せ所です。
ちなみにキャビアの直径はベルーガで2~3ミリ、鯛の卵は0.8~1.2ミリくらいです。