刀装具の撮像【2】《うっとり》
美しいものに魅せられて、ぼーっとするさまを「うっとりする」と言いますが、ここでの《うっとり》は金工技法のひとつで、前者とはイントネーションの違いで区別します。
刀装具とは鞘や鐔(つば)など、刀剣に付随するアクセサリーのことを指します。画像はそのうちの一つ、目貫(めぬき)と言って左右一対を柄(つか、両手で握るところ)に巻き込んで使用します。元来は戦闘における機能的なパーツでしたが、時代が下がるにつれ装飾品としての意味合いが強くなりました。
この目貫は赤銅地の一部に金の薄板を被せ、密着させる技法を用いて製作されています。この技法が《うっとり》で、画像中の花の大きさは約4ミリ四方、その隣の金の粒は葉に残る水滴、「露」を表現しており、その直径はわずか1ミリです。
人間の眼は不思議なもので、例えばフローリングの床材を見て厚さを想像することができます。《うっとり》も鍍金や箔より厚く、金無垢の質感とも違うのが感覚でわかるのですが、高精細な撮像で得る画像データからは、金の純度を推定することも可能です。