刀剣の撮像【6】《カラーでの撮像》
高度に研磨された刀剣は貴金属のような光沢があり、鏡のように周囲を映し込んでしまいます。このため、撮影自体も難しいのですが、カラーでの表現はさらに技術を必要とします。これまでに発刊された多くの刀剣書の写真が黒白であるのもそのためです。
玉鋼(たまはがね)を素材として鍛造される刀剣は、基本的にモノクロームです。鉄の美しさを希求し研磨師は意図的に刃は白く、地は黒く磨きコントラストを強調するのですが、洗練された鑑識眼は黒白の中に色を識別します。光沢のある金属の『本当の色』が何かは私にもわかりませんが、カラーチャートといっしょに撮像することで色の被りをニュートラルにすることは可能です。また、中心の錆色は製作年代や真贋を知る大きな手がかりとなりますので、正確なカラーでの撮像には意味があります。
写真の短刀は幕末期以来、理由あって手入れがされていません。今は刀身が錆びていますが、上手な研磨師の手によって澄んだ青の中に薄い紫を取り戻す鎌倉末から
南北朝期の名刀です。