Spare Time Studio

刀剣・刀装具を中心とした高精細画像と『美』にまつわる話を綴る”空閑工作室”

刀剣の撮像【9】《髙見太郎國一・その1》

 

髙見太郎國一は河内國平氏(奈良県無形文化財)の一番弟子で、師匠のもと7年余の厳しい修行を終えたのち1999年に独立、兵庫県佐用町に鍛刀場を構えて日々創作活動に励んでいます。

 

 

お待たせしました。
ようやく一振、現像・加工処理が終わりました。

 

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表「播磨国  髙見太郎國一作之」

裏「天涯此隣 平成廿五年 八月日」

 

写真は前回ご紹介した同じ刀ですが、銘が切られています。

刀匠名『太郎國一』は師匠から贈られた一番弟子の称号。これまでは「髙見國一」のみを用いていましたが、この刀に初めて太郎が入れられました。
どこか心境の変化があったのでしょう。

刀匠と言うと、なんとなく難しそうなイメージがあると思いますが、とても気さくな好青年で、長年の友人でもあります。

 

刀匠、髙見太郎國一についてもう少しお知りになりたい方は、彼のHPまで。

髙見國一 オフィシャルウェブサイト

『髙見國一鍛刀場』

 HP内リンク先の彼のブログ、「鍛冶屋生活ONとOFF」もおすすめです。

 

 

さて、写真の話を少し。

切先から中心尻までおよそ100センチあるので、まず、表裏をそれぞれ4カットに分割して専用撮像機で画像を撮りこみ、ピクセル単位の正確さで繋ぎ合わせます。
その後、階調や色彩の調整、表面についた微細なゴミとり作業を経て一枚の画像に仕上げます。元画像はデジタル・アーカイブとしての活用を考え800dpiで撮像していますが、これではあまりにもサイズが大きいため、今回はモニタ上での観賞用として150dpiに縮小しています。

 

拡大画像はこちら。 http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/10054326526/sizes/o/

 

 

途中ほかのテーマも織り交ぜながら、数回に分けて刀匠・髙見太郎國一と彼の作品について綴ります。

 

 

刀剣の撮像【0】

 

ブログを開始する前は、画像ををアップすることに少なからず抵抗がありました。フィルムからプリントしたものを観てもらうのとは違い、デジタル・データは簡単に複製することができます。画像を小さくしたり、ウォーターマークを入れるなどの対応策はあるのですが、フォトグラファーとしては、できればオリジナルの品質で観て欲しいというジレンマに駆られます。

 

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この写真は、悩みながらブログを始めて最初に掲載した『新作刀』の写真です。

 

オリジナルサイズはこちら。 http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/9990479165/sizes/o/

デジタル・アーカイブ用に16bit 800dpiで撮像したものを、銀塩写真プリント用として8bit 300dpi TIFFに変換し、さらにWeb用にJPEG変換したものです。少し圧縮をかけていますが、モニタ上であればオリジナルデータと比較してもあまり違いがわかりません。データもずいぶん軽くなっていますので、短時間で画像を開くことができます。

 

 

この刀を撮像したのは研ぎ上がりすぐで、まだ銘が切られていませんでした。
刀剣の鍛錬は難しく、研磨してみないことにはキズや刃切れ(ハギレ)等の状態が見えません。そこで刀匠は銘を切る前に研磨に出し、出来映えに納得して初めて銘を切ります。刀剣の銘切りは慣例的に2月、8月に行います。(例外もあります)

 

次回、銘が切られたこの刀の全容とともに、刀匠のご紹介をさせていただきます。

 

気がつけば、10日も・・・

 

このところ少しばかり忙しく、ブログの更新はおろか、みなさんのブログに立ち寄ることもままならず。それでもお立ち寄りいただいた方々には、大変失礼いたしましたm(_ _)m

 

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新しい機材を持ちだして、ロケに行ってきました。添付の写真はiPhoneで撮ったロケ現場のスナップです。軽くレタッチしています。少しモヤがかかっていますが、空気はすっかり秋に変わっていました。何処だかお分かりになりますか?

さて、久しくメインテーマの刀剣・刀装具から離れていましたが、近日中に新しく撮像した刀剣をご紹介させていただきます。その他、建築・建造物や風景の写真など、ほとんどの方が見たこともない超高解像度にて。現像と加工が終了次第、更新させていただきます。

 

 

建築・建造物の撮影【0】《大判プリントのための撮影法》

 

2008年に撮影した一連の【0】は、今回が最終回です。

 

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オリジナルサイズはこちら。 http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/8976256432/sizes/o/

 

水立方は4枚組、鳥の巣は2枚組の作品として、大判プリントを目的に撮影しました。周囲の余白部分を含めたプリントサイズは約70x30センチメートル、ピクセル数で言えば約3000万ピクセルです。使用した機材はNikon D3にPC85mmの組みわせ、横長作品とするために左・中央・右の順にレンズをシフトさせて定点撮影した2〜3枚をPhotoshopで繋ぎあわせています。

 

Nikon D3の有効画素数は1210万画素、横幅は4256ピクセルなので仮に300dpiでプリントした場合、幅36センチまでしか引き伸ばすことができません。現在販売されているNikon D800は有効画素数が3630万画素ありますので、これであればワンカットで撮ることができます。しかし、受光素子の単位面積が小さいため、ダイナミックレンジがD3に比べてどうであったか。特に真夜中の撮影では、照明などの発光体から真っ暗な夜空までを写すので、ISOや露光時間を綿密に設定したとしても、ノイズを抑えるのは条件的にかなり難しいのではないかと思います。フラッグシップモデルのD4が、有効画素数を1620万画素に抑えているのもこの辺に理由があるのではないでしょうか。

 

スマホで気軽に撮った写真を、その場でアップして世界中の人に見てもらう。

そんなデジタル的な面白さも捨て難いですが、大判プリントを目的とした、どこかアナログ的な手法で高精細な作品を追求するのも楽しいものです。

 

 

 

建築・建造物の撮影【0】《オリンピックは、建築の祭典でもある。》

 

今週は、建築・建造物の撮影【0】と題して、2008年北京オリンピックのメインスタジアム、鳥の巣(Bird’s Nest)と水立方(Water Cube)の写真を掲載しています。オリンピックは「スポーツの祭典」と言われますが、同時に、国家の威信をかけた「建築の祭典」でもあります。

 

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オリジナルサイズはこちら。 http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/8976255088/sizes/o/

 

つい先日、2020年の開催が東京に決まりました。これから7年の間、様々な箱モノが同時進行で建設されていきます。中でもメインスタジアムとなる新国立競技場は世界的に著名な建築家によるコンペで、ザハ・ハディド氏の作品が選ばれました。面白いのは、これはまだデザインの構想であること。技術者は数々の難題に直面しながら、この斬新な大建造物を創り上げていきます。当初の予算は1300億円ですが、大幅に超えることは間違いありません。東京近郊にお住まいの方は、この世紀の大建築を完成するまで間近で記録するチャンスです。

 

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話は変わりますが、私は若いころ、ご縁があって建築家の戸田一郎先生にずいぶん可愛がってもらいました。残念ながら今は他界されて久しいのですが、建築について多くを教えていただいた恩師です。

エピソードのひとつ、1964年の東京オリンピックのために建設された代々木国立競技場について。言わずと知れた丹下健三氏の代表作であり、吊橋と同様の構造をした曲線が美しい、当時の最先端の建築です。この建物、竣工当時より雨漏りが酷く、まるで丹下氏の設計ミスのようになにかと物議になっています。確かに設計に無理もあったのでしょうが、根本的な問題は設計した建物が敷地に収まらなかったこと。丹下氏は敷地に収めるため、苦肉の策として建物の左右をずらすことで、なんとか敷地に収めますが、その歪みが雨漏りの主原因になったそうです。
戸田先生は「建物が敷地に収まらない設計なんて、最低だよ。ガハハハッ」と、どこか嬉しそうに高笑いされていました。その後の改修で、雨漏りはかなり改善されています。

 

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建設地にはそれまで占領アメリカ軍敷設があり、返還交渉が難航したことからようやく着工できたのがオリンピック前年の2月。竣工はオリンピック開催の僅か39日前という、考えられない突貫工事の末、世界中を魅了した国立代々木競技場が生まれます。おそらく、じゅうぶんな測量もできない状況下で設計を同時進行したのでしょうね。雨漏りがしても、私はこの建物が大好きです。

 

 

2枚目と3枚目の写真は、ネット検索でお借りしました。

建築・建造物の撮影【0】《PURPLE》

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4枚組の作品です。あともう一枚だけ、お付き合いくださいませ。

 

 

オリジナルサイズはこちら。 http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/8976252808/sizes/o/

建築・建造物の撮影【0】《BLUE》

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東京でのオリンピックが決まりましたね。

 

 

オリジナルサイズはこちら。 http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/8976254052/sizes/o/

書の撮影【1】《階調の追求》

 

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よく「墨に五彩あり」と言われます。五彩とは五色のことではなく、
無限の色のこと。墨に色はありませんが、濃淡やぼかし、にじみやかすれ等の
技巧によって様々な表情を見せます。

 

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16ビットでの撮影は2の16乗、65536の階調を捉えることができます。
デジタルの世界ではフルカラーで280兆色。ただし、人間の眼は200階調を
超える辺りから識別できませんので、8ビット256階調で処理されるのが一般的です。

 

ん〜、ちょっと話が難しくなりました。

 

仮名の作品では題材に合わせて料紙にもこだわります。
書家によっては1枚が1万円を超える料紙を選ぶ場合も。
軽い気持ちでは、書けません。

 

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書の撮影は半紙のような小さなサイズであれば、全面に均一な光が当たるスキャンニングが適しています。三六や二八のような大きな作品については、また後日。

 

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画像は10数年前に書道展出品のお手本としていただいたものです。
落款ではなく、□なのは『作品ではない』という印(しるし)です。

 

「おく山に もみぢふみわけ なくしかの 聲きく時ぞ 秋はかなしき」

猿丸太夫

 

 

高精細画像はこちら。墨の五彩と仮名料紙、それぞれの表情をご覧ください。

http://www.flickr.com/photos/sparetimestudio/9642399123/sizes/o/

 

 

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